
彼の名前は中田。実家は地元でも有名な古寺。
幼い頃から、呪物や曰くつきの品を“日常”として見て育った。
そんな彼には、見えないものに“気づく力”がある。
今日の荷物──昨日、同僚が受け取ってから急に体調を崩したという、あの奇妙な荷物かもしれない。
女性のサインに笑顔で応じつつも、中田の眉間には、わずかな皺が寄っていた。
「……なんだか、気配がある」
静かな違和感を感じ取る、敏感な男が受け取った“何か”の一枚。
■「連鎖の物語シリーズ 一覧」
>> 第1話 「負の感情を箱に詰めこむ女」はこちら
>> 第2話 「感の良い配達員」はこちら
霊感持ちの配達員と、“重さ”のない荷物
同僚が体調不良で休み、急遽配送ルートが変更になった配達員の中田。

「こんにちはー!お荷物お届けにあがりました〜!」

は〜い。ちょっとお待ちください
一見明るい20代の配達員・中田。
しかし彼には、人には言えない特技があった。

「小さい頃から、人の“感情”が強くこもった物には敏感なんです。
触ると、背中がゾワッとするんですよね…」
その日手にした箱。サイズのわりに軽い。
だが触れた瞬間、彼は小さくつぶやいた。

「……重っ……」

これなんか重いもの入ってます?

あ、やべ気になってプライベートな質問しちゃった

いえただの人形ですよ
手が痺れるような違和感。
そして、鼻の奥にツンとするような“涙の記憶”。

「…これ、多分、誰かの“別れ”だな。しかも…未練ありまくりだ」

早く届けたい。とにかくこの“気”から離れたい。
荷物を届けた後も、助手席から妙な視線を感じるような…そんな午後だった。

手放したはずの感情ほど、よく響くんだよ。…受け取る側に。
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